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トリコロール


1 魔法使いの試験場

試験官 どうぞ。
魔法使い し、失礼します。

    緊張した顔の魔女が現れる。オーソドックスな魔女の姿。手にはほうき。
    試験管は手で受験者用の椅子へと促す。

試験官 受験者は受験番号のみを言いなさい。
魔法使い はい! 受験番号、七十七番の......
試験官 番号のみ、の声が聞こえませんでしたか?
魔法使い す、すいません。
試験官 七十七番、あなたの成績は大変結構です。内申点、筆記試験、共に合格ラインに達しています。頑張りましたね。
魔法使い ありがとうございます。
試験官 そのコスチュームも自作だと聞きましたが、
魔法使い はい。いかにもという感じでまとめてみました。......少し派手だったかもしれませんが。
試験官 大変結構です。
魔法使い じゃ、じゃあ。
試験官 しかし。実技テストでの成績が、いまいちですね。
魔法使い え、でも。
試験官 目的はクリアしています。しかし、そのためには手段を選ばないと言うか、あなたのやり方には美しさがありません。
魔法使い ですが。
試験官 言いたいことは分かります。終わりよければ全て良し。確かにその通りかもしれません。しかしそれでは、我々の仲間になるには足りないのです。
魔法使い そんな......あんなに頑張ったのに......(と、立って帰ろうとする)
試験官 まだ話は終わってませんよ。
魔法使い すいません。(と、慌てて席に座る)
試験官 おめでとうございます。
魔法使い は?
試験官 ここに案内されたと言うことは、2次試験までは合格と言うことです。
魔法使い え? じゃあ、さっきの、足りないって言うのは?
試験官 ただの感想ですが?
魔法使い 脅かさないで下さいよ~。
試験官 口調が軽くなりすぎです。
魔法使い すいません。
試験官 ここでは次の最終試験の説明をさせてもらいます。
魔法使い 最終試験。
試験官 すでにいくつか説明は受けていますね?
魔法使い はい。使え、ないんですよね?
試験官 そうです。ですが、そんな不利な条件でも我々の仲間であるとわかるような結果を見せてもらわなくてはいけません。自信はありますか?
魔法使い 大丈夫です。もう、目星はつけてありますから。
試験官 この最終試験に合格すれば、あなたは我々の仲間として認められます。しかし不合格の場合、再び試験資格を得るためには、10年の研修期間をおいてもらいます。
魔法使い 10年!? なんで!?
試験官 なり手ばかりが増えても、困りますから。
魔法使い (小声で)......鬼っ。
試験官 なにか言いましたが?
魔法使い い、いえ。なんでもないです。......(小声で)地獄耳。
試験官 ......聞こえてますよ。
魔法使い えっと、 では、七十七番、行って参ります。

2 とある教室での二人。

モモコ (と、目覚めると大きくあくびをし)あーあ、疲れた。月曜ってやっぱりだるいよね。
アイカ 別に私はそれほどでもないけど。
モモコ あたし、アイカと違って勉強のためだけに生きてるわけじゃないから。って、こんな時間!? え、ずっと勉強してたの?
アイカ 今日は塾なかったから。モモコ、気持ちよく寝ているみたいだったし。
モモコ そこは起こそうよ。寝すぎて余計に疲れちゃったよ。
アイカ 声はかけたわよ。でも、全然起きなかったの。
モモコ そ、そうなの?
アイカ お昼休みから、よく寝ていたじゃない。チャイムの音が鳴るのにも気づかないでグーグーグーグー気持ちよさそうに。あんまりよく寝ているもんだから、先生が「可哀相だ」って、起こさなかったのよ。
モモコ そっか。先生に好かれてると、こういうときに困るよねぇ。
アイカ 昨日、寝るの遅かったの?
モモコ 友達と長電話しちゃって。電話かかってきたのが11時過ぎくらいだったのに、終わってみたら、4時過ぎててさ。
アイカ よくそんなに話がもつわね。
モモコ いっぱいあるでしょ。ほら、昨日だったら、あのバラエティとか。
アイカ ......?
モモコ え、もしかして、昨日のあれ、見てないの?
アイカ ......??
モモコ 今時あれ見ていない高校生なんていないよね。もしかして、本当に見てない?ほら、ドリフターズの
アイカ ああ、あれなら見......
モモコ 裏番組の天才たけしの元気が出るテレビ。
アイカ ......昨日は、勉強してたから
モモコ ふーん、アイカって、勉強しか、やること無いみたいじゃない?
アイカ 私は今の楽しみよりも、10年後の楽しみのために勉強してるの。
モモコ そんな先の事なんて考えてるの?
アイカ 考えてないの?
モモコ 今がよければ、それでいいじゃん。最近異常気象とか多いし、10年後1999年にはノストラダムスの予言通り地球なんてこっぱみじんこかもよ。
アイカ モモコらしいね。
モモコ アイカ、もっと友達作って、学校生活を楽しみなよ。参考書見てばかりじゃあ人生損してるよ。
アイカ 友達がたくさんいるからって人生楽しくなるとは限らないでしょ。むしろ友達がたくさんいるせいで、勉強が出来なくって、どんどん落ちこぼれていく可能性の方が高いんじゃない?
モモコ それは言いすぎじゃない?
アイカ でも、休み時間に勉強できないでしょ? 貴重な時間を、友達と過ごすことに使ってるじゃない。
モモコ だって、せっかくの休み時間なんだよ?
アイカ その10分間で、どれだけの英単語が覚えられると思う? 問題集だって、3ページは確実に解けるし。
モモコ 私はそうやってコツコツやるのって苦手。一夜漬けの方が得意だな。
アイカ じゃあその得意の一夜漬けの成果はどうだったの?
モモコ 今日返ってきたテストのこと? まあ、けっこうできたよ。
アイカ けっこう? ってことは 90点代?
モモコ いや、あの・・・。
アイカ ってことは70点くらい
モモコ ぼちぼち・・・。
アイカ やっぱり。でも、半分は取れたでしょ? 私が教えた所出たんだし。
モモコ えっ......。
アイカ あのテストで半分以下取る高校生なんていないわよね。それこそ、よっぽどの馬鹿でもなければ、分かるような問題ばかりだったし。
モモコ ............。
アイカ ......半分以下だったの?
モモコ うん、30点。
アイカ ・・・ごめん。
モモコ 別に良いよ、気にしてないから。
アイカ そうよね、モモコは勉強なんてどうでも良いって思っているんだし。
モモコ あっ、でもあれは書けたよ!アイカが2時間かけて教えてくれたやつ......ほらっ......あれ? なんだっけ?......イフ......イフユア......ユア?
アイカ If your wish came true,what would you wish? 「もし願いが叶うなら、何を願いますか?」 ね? やっぱり一夜漬けじゃ本当の実力はつかないのよ。
モモコ みたいだねぇ。ま、次は頑張るって。
アイカ 前回もそう言ってたじゃない。来年は受験生なんだから。
モモコ 受験かぁ。なんかまだピンとこないな。
アイカ 『今がよければ......』って言ってたもんね。
モモコ うん! アイカ、もし今願いが叶うなら、何が欲しい?
アイカ なに急に。そんなのありえないわよ。
モモコ だからたとえばの話だって。ほら、言ったでしょ。イフユア............
アイカ If your wish came true,what would you wish?
モモコ それよ、それ。たったひとつだけ叶うとしたら何を願う? あたしだったらねぇ。新しい鞄! いや、彼氏? ううん。いっそ現金の方がいいかな。アイカは?
アイカ あたしは別に欲しいものなんて無いわよ。
モモコ 別に形があるものじゃなくてもいいじゃん。
アイカ そうね。2人の永遠の友情、なんてのは、どう?
モモコ おお! いいね、それ! 私も同じ願い事する! 二人の友情がずーっと続くようにって。
アイカ 調子いいわねぇ。絶対そんな事思ってなかったくせに。
モモコ 世渡り上手だから、私。
アイカ 願い事なんて叶わなくても、私達友達でしょ。
モモコ もちろんこれからも、ずっとね。

3 魔法使いと二人。

魔法使い マハリクマハリタヤンバラヤンヤンヤン。魔法の・・・。
2人 ・・・。
魔法使い 国からやってきた。
モモコ ちょっとおちゃめな女の子。
魔法使い・モモコ サリー!
アイカ このまま、職員室行って、先生呼びましょ。
魔法使い 違うの。怪しい人間じゃないの。あなた達が今、話していたことについて、ちょっと話があるだけなの。
アイカ (モモコに)行くわよ。
モモコ 怪しい人間じゃないって。話くらい聞いてあげようよ。何か、面白そうじゃん。
アイカ どう見たって、怪しい人にしか見えないじゃない。
魔法使い だから怪しくないの! 
アイカ 校内で怪しげな商品の販売されたって、私達は買いませんから。
魔法使い そんなコトしないわよ。
アイカ ......もしかして、願いを叶えてやる。とか言うの?
魔法使い ピンポーン!
モモコ ......行こっか。 
アイカ そうね、行きましょう。
魔法使い ちょっと待って!願い事が叶うかもしれない機会を失くしちゃうんだよ? いいのかなぁ。後で絶対後悔するよ。
アイカ いったい何? 学校関係の人間には見えないし。そんな変な格好して、みっともないとは思わないの?
魔法使い みっともないって何よ!!この服わね、伝統にのっとった由緒正しい服なのよ!!
モモコ ......魔法使い。
アイカ やっぱりおかしいのよ。
魔法使い ちょっとー!私は魔法使いなの!! (と、小声で)見習いのようなもんだけど。
モモコ え?何か最後の所よく聞こえなかった。
魔法使い 動物の言葉だって分かるんだから。ほら、見てあそこにいるカラス、『お腹空いた』って言ってるわよ。
モモコ やっぱり本物かもよ。
アイカ 証拠を見せなさいよ。もっと、ちゃんとはっきりと、本物の魔女だって言えるだけの根拠を。
魔法使い ......わかったわ。見てて。......五千九百八十円
アイカ え?
モモコ なに?
魔法使い (アイカを指さす)あなたの財布の中身。五千九百八十円。他にテレホンカードが二枚に、市の図書カード一枚そして『田中角栄』のプロマイド。
モモコ タナカカクエイ??

魔法使い だから、私は魔法使いだって言ってんでしょ。信じた?
モモコ じゃあ今の魔法?
アイカ 魔法。のわりにはせこいわね。手品と変わらないじゃない。
モモコ 他のこと出来ないの
魔法使い だから、願い事を叶えてあげるってば(と、かわいく)
モモコ そんな可愛い言い方しといて、願い事を叶える変わりに、お前の魂を地獄に引きづり込んでやる、とか。
魔法使い そんなことしないわよ。私はいい魔法使いなんだから。
モモコ そっか。
アイカ そっかじゃないわよ。悪い奴がわざわざ自分から『私は悪い人間です』なんて言う分けないでしょ。
モモコ そうだね。酔ってる人間ほど『いやぁぜんぜん平気ですよ』って言うのと同じか。
アイカ そうよ、だからこれの言うコトなんて簡単に信じちゃダメよ。これが本当に魔法使いなんてまだ判んないんだから。
魔法使い これってなによこれって。私にだって名前があるんだから、名前で呼んでよ。
アイカ 言ってないのに、わかるわけないでしょ?
魔法使い そ、そっか。(咳払い)私の名前はユーラシア・UN・ユーゴスラビアユートピア・ユータナジー・ユザワヤよ。
モモコ えっと、ユ、ユ、ユ..................ユザワヤさん。ごめんなさい、覚えられなかった。
アイカ ......それで、その魔法使いさんが、どうして私達の願いを叶えてやるなんて言うの?
魔法使い 幸せの無償奉仕よ。
モモコ 幸せかぁ!
アイカ 財布の中身を見るぐらいしか脳がないくせに、人を幸せにするなんて出来るの?
魔法使い 出来るわよ。
アイカ ......さっき、見習いだけど、とか言ってなかった?
モモコ じゃあ例えば、どんな魔法を使ったんですか?
魔法使い 気になる? ど~しても? ど~しても知りたい?しかたないなー、特別に教えてあげる。本当は、他の人の願い事を第三者に教えることはいけない事なんだけど......本当に特別よ。

    魔女は人形を取り出す。

魔法使い これよ
モモコ ......人形?
魔法使い そう。でも、ただの人形じゃあないの。............あのね、『この美しさが年老いて朽ち果てるなんて耐えられない。永遠に美しいままでいたい。年を取るなんて嫌ッ!お願いよ魔女さん。私の美しさを永遠のものにして』って、願った人がいたの。だから、これ。
アイカ はあ!?
モモコ 人形にしちゃったの!?
魔法使い そうよ。だって、ほら、永遠に美しいままじゃない。ちょっと、ちっちゃくなっちゃったけど、いつまでも肌はすべすべ、しわ一つ出来ないわよ。
アイカ ......絶対、本人が願ったことと違うと思う。
魔法使い そんなこと無いわよ。ほら、幸せそうな笑顔でしょ?絶えず微笑を続けて、もう笑顔そのままって感じよね。
モモコ ......他にはどんな願いをした人がいたの?
魔法使い そうねぇ.........お金が欲しいって願い事をした人がいたわ。
モモコ お金、お金かぁ。それでどうしたの?
魔法使い お金が欲しいんだから、お金があるところに連れてってあげようと思って。日本銀行の、金庫の中にぽーいっと。
モモコ あ、何か聞いたことある。
アイカ 『世紀の大泥棒、厳重な警備をくぐり抜け、銀行金庫内に潜入』って、何週間かニュースを騒がせたやつね。......最近の話じゃないの。
モモコ 確かその泥棒さん、瀕死の状態で見つかったんだよね。
アイカ 当たり前じゃない。金庫の中は密閉されているのよ。下手したら、窒息死ね。
魔法使い えっ......
モモコ 酷い。
魔法使い な、何でそうなるのよ。お金が欲しいっていったから、ハイハイッて願いを叶えてあげただけじゃない。私は悪くないわよ。そんな願い事をする方が悪いのよ。
アイカ ふうん。
モモコ ............
魔法使い なによぉ
モモコ もしかして、まだあるの?
魔法使い もちろん!聞きたい?聞きたい?
モモコ ......もういい。
魔法使い じゃあいよいよ君たち2人の番ね。何にする? なんでも一つだけ叶えてあげる。
アイカ ......ねぇ、それって、2人で一個?
魔法使い うん。
モモコ やっぱ見習いなんだ。
魔法使い べつに私が見習いだからとか、そう言うわけじゃなくて、ただこちらにもキマリって言うかなんていうか。
アイカ 2人で一個って言う事実は変わらないんでしょ、結局。
魔法使い ......うん。だから2人で相談して決めてネッ! 
モモコ 相談って言われても......。
アイカ ............。 
魔法使い そんな深刻になんなくっても。
アイカ うかつな願い事なんてしたら、あなた何するか分かんないじゃない。それに、私達は別の人間なのよ、2人で一つの願い事なんて、そう簡単に見つかんないわ。
魔法使い どうして?
アイカ どうしてって、
魔法使い だって2人は友達でしょ?2人で一緒に楽しめることいっぱいあるじゃない。実際いたよ、2人専用のカラオケBOXほしいとか、2人でアルプス旅行したいとか。そういうのないの?
モモコ ......私......私、光GENJIチケット最前列ど真ん中がほしい!!
魔法使い 2人ともの光GENJIのファンなんだ。せっかく2人で行こうと思ってたのに、チケットとれなかったのね。
アイカ 光るてんとう虫?
魔法使い あれ?
モモコ ......あっあのliveは......あゆみと行こうと思ってて。だって!嫌いでしょアイカそういうの。だから......お願い!!願い事譲って! どうしても行きたいの!!友達でしょお願い!!
アイカ ......うそつき。
モモコ え?
アイカ モモコ言ったじゃない。私と同じ願い事するって。
モモコ ......。
魔法使い え? あるんじゃない!2人同じ願い事。な~んだ。だったらもっと早く言ってよ。私ちょっとドキドキしちゃった。2人の同じ願い事、それ叶えてあげるから。言ってよ、ほら。
アイカ もういいわよ。
モモコ アイカ。
アイカ モモコの願い事叶えてもらえばいいでしょ。
モモコ そんな言い方しなくたっていいじゃない。なんで私ばっか悪いの? アイカだって魔法使いさんが、
魔法使い だから名前が。
モモコ どうでもいいよ! 魔法使いさんが2人で一個の願い事って言ったとき、すぐ言わなかったじゃん。本気で思ってたんなら、すぐ言えるよね?
アイカ ......責任転嫁しないでよ、モモコこそ、適当に合わせてただけで、そんな気なかったくせに、嘘だったんでしょ。
モモコ 嘘じゃないよ。
魔法使い 嘘だったんだよね。
アイカ&モモコ !?
魔法使い 永遠の友情なんて、よっぽどの本物か、全くの偽物じゃなきゃ言えないよ。
モモコ やっぱり私達の会話、しっかり聞いてたんだ。
魔法使い え、あっほら、その......ぐ~ぜんたまたま聞こえちゃって......
アイカ それで、あなたは私達の友情が、偽物だって言いたいの? 確かにちょっともめちゃったけど、仕方ないじゃない。そう言うことだってあるわよ。
魔法使い アイカちゃん怒んないでよ、私が言ったわけじゃないんだから。
モモコ なにそれ!? 私達が、自分で言ったって言うの?
魔法使い 似たようなこと言ってたよね。

4 過去の教室①

    ふと、空気が変わる。
    今日ではない教室の風景になる。
    そこでは、魔女はモモコの友人あゆみを演じる。
    アイカはそんな二人を見ている。

あゆみ(魔法使い) チケット残念だったよね。
モモコ ホ~ントスッゴイ頑張ったのにさ。当日ダフ屋とか出てるかな。でもぼったくられそうだし......あ~~あ。
あゆみ またチャンスはあるよ。ねっそれより......よかったの?
モモコ なにが?
あゆみ live、あたしとで。
モモコ なんで?
あゆみ だってあんた藤田さんと仲いいじゃん。やきもちやくんじゃない?
モモコ アイカがやきもち?何言ってんの。
あゆみ だって、あの子って、他に友達いないっぽいじゃん、逆に言うと、モモコがたった1人の友達なんだよ。それなのに他の子とliveとか行ったら嫌なんじゃない?
モモコ 冗談やめてよぉ。そりゃアイカは友達っていないけど、それってアイカの勝手じゃん。私が遠慮する必要ないよ。
あゆみ まあね。
モモコ でしょ。それに、私、充分アイカの相手努めてるでしょ。ちょっとぐらいリフレッシュしたいよ。
あゆみ ......やっぱ疲れるんだ?
モモコ 疲れるっていうかさ。アイカって勉強ばっかって言うか、勉強にしか興味ないし。だからドラマなんて全然みてないし、時々何の話していいかわかんなくなるんだよね。でも、テストの山なんか教えてもらえるじゃん。教え方も先生より詳しいし、一緒にいて損はないからさ。
あゆみ ふ~ん。
モモコ それに、アイカ頭いいって言っても、教科書以外の事って全然駄目なの。ちょっとしたなぞなぞとかは、もう真っ直ぐに考え過ぎちゃって、絶対答えに辿り着かないんだ。だからね、思うんだ。そりゃあアイカの方が、私より成績はいいけど、私の方が人間的に、優秀なんじゃないかって。結局勉強できてもそれだけじゃ、でしょ。
あゆみ まあねぇ二人見てると、モモコがあの子に手差し伸べてるみたいだもんね。
モモコ でしょ!!いい引き立て役ってトコかな。アイカにしたって、悪い話じゃないと思わない?友達やってあげてんだから。感謝してもらわなきゃ!!

5 過去の教室②

    景色が元に戻る。

魔法使い モモコちゃんって、頭悪いくせにこういうとこすごいよね。尊敬しちゃう。
モモコ ちょっと、何でそのこと。
アイカ ずっと友達だって思ってたのに。私を利用してたのね。
モモコ ちがうよ。これは、
アイカ 何が違うって言うのよ!
魔法使い どうして怒るの?
アイカ 怒るに決まってるでしょ!?
魔法使い そうか。アイカちゃんは誤解してたんだもんね。利用してるのは自分だって。
モモコ アイカ?
アイカ ......何言ってるの?
魔法使い だから、言ったのは私じゃないんだよ。

    ふと、空気が変わる。
    今日ではない教室の風景になる。
    そこでは、魔女はアイカのクラスメイト(秀才風)を演じる。
    モモコはそんな二人を見ている。

生徒 あの、藤田さん。今日のReadingで判らないところがあったんだけど、おしえてもらってもいい? ......藤田さん? 何見てるの? 10円玉?
アイカ ああこれ......さっきモモコが変なこと言うから気になって......ほら、この10円玉の平等院鳳凰堂の扉をじっと見てると、閉じたりしまったりしてるって。
生徒 ......それでずっと悩んでるの?
アイカ ......ずっと気になっちゃって............どういう事かしら。閉じたりしまったりって......
生徒 ......漢字で考えてみれば? ......ねっ閉じるもしまるも。
アイカ あっ............同じ............くだらない。
生徒 その問題出したの梅崎さんでしょ? きっと悔しかったのよ。ほら彼女、お世辞にも頭いいとは、ね? ......それにしても、こんな問題出して喜ぶなんて彼女って本当に低レベルなのね。
アイカ いいのよ。こういうくだらない問題しかできないんだもの。かまってあげなきゃ可哀相よ。私の方が大人なんだし。
生徒 でも大変じゃない? 色々と。
アイカ 自分よりレベルの低い人間と一緒にいると、自分への戒めになるのよ。『こうなってはいけない』って。時々考えるの、もしも私がモモコみたいだったら......ゾッとするわ。だからモモコと話す度に、どんなことがあっても、彼女のようにはならないように気を付けてるの。もっとも、あの子と一緒にいれば、どう見たって落ちこぼれを見捨てない優しい友人に見えるだろうけど。
生徒 確かにね。
みずき 世の中の何の役にも立ってないんだから、使ってあげないとね。馬鹿とハサミは............ってやつよ。

6 決裂

    元の教室に戻る。

魔法使い やっぱアイカちゃんの方が頭いい分言うこと違うよね。でも結局は、似たもの同士ってことだよね。......あれ?
モモコ アイカだって私のこと利用してたんじゃん。被害者ぶっちゃって。そっちの方が、よっぽど酷いコト言ってるじゃない。
アイカ よく言うわよ! 私のこと影で悪く言って、お調子者ってサイテーよ。
モモコ そっちこそ『ずっと友達で』みたいなこと言ってたくせに。全部嘘じゃん。最悪。
アイカ あんた頷いてたじゃない。だいたい、いつも寝てばかりいるような頭で、人を騙そうとする事自体馬鹿なのよ。
モモコ その馬鹿に騙されてたんでしょ。いくら勉強が出来ても、他は何も分からなきゃね。やっぱりだめだよね。
アイカ あんたは、その勉強すらできないんでしょ。
モモコ あたしは勉強なんて出来なくても、世の中わたっていけるから。アイカなんて、勉強取ったら何にも残んないくせに!
アイカ 勉強出来なきゃ、まともな就職だってできないじゃない。モモコなんて、どうせ風俗店にでも勤めるのよ。
モモコ 就職って勉強だけじゃないから。バイトもしたこと無いから分からないだろうけど、面接でお店の人に気に入られるのも大切なんだから。アイカは、そんなこと全然出来無いでしょ。変にプライドだけ高くして、どうせどんな仕事についてもすぐやめちゃうんだよ。
魔法使い ちょ、ちょ、ちょっと、二人ともケンカしないでよ。何で二人ともケンカするの? 互いの本音が分かったんだから良かったじゃない。これでやっと本当の友達でしょ?
モモコ こんな人、もう友達じゃないわよ。
アイカ 友達なんて、こっちから願い下げよ。
モモコ アイカなんて一生暗い人生送ればいいのよ。
アイカ あんたはノー天気な人生しか送れないんでしょうね。

    モモコとアイカはそれぞれ帰ろうとする。

魔法使い ちょ、ちょっと待って。ねえ、願い事は?
二人 いらないわよ!!
魔法使い そんな......本当にいいの?幸せになれるんだよ? 人生にたった一回しかないチャンスかもしれないよ? 本当にいいの? 後で後悔するよ絶対。ああ、あの時願い事叶えてもらえば良かったって。
アイカ 私は、別に魔女の力なんてを借りなくてもまっとうな人生送れるからいいわ。
魔法使い そんなせっかく。
アイカ だったら今すぐモモコのこと消しちゃって。
魔法使い 私はいい魔女だからそれはちょっと・・・。
モモコ じゃあアイカと私を赤の他人にして!!
アイカ そうね、それがいいよ。
魔法使い え~そんなところで気が合わなくったっていいのに。
モモコ 願い事叶えるんでしょ? さっさとしてよ。
アイカ 彼女に当たることないじゃない。みっともない。
モモコ そうやって上から目線で言うのやめてくれない?
魔法使い いや、私のことは、ぜんぜん、そんな
アイカ 黙ってて。
魔法使い はい。
アイカ 魔法で縁が切れないんならいいわ。じゃあねモモコ。あなたどうせ来年も二年生でしょ。あと一年同じクラスで我慢すれば校舎別々になって顔見ることもなくなるわね。
モモコ 同じクラスにいたって参考書とにらめっこしているような人の顔なんて思い出すこともできないから、一年我慢せずにすみそうよ。

    アイカとモモコが去る。

魔法使い えっあっちょっと待ってよ~! 

7 魔女とモモコ

    と、モモコが戻ってくる。

魔法使い ああ、良かった。やっぱり友情は大切って気づいたの? アイカちゃんは?
モモコ 二人で昇降口まで一緒なのも嫌だから、帰る時間遅らすの。
魔法使い あ、そうなんだ。......いいの? アイカちゃんとこのまんまで。
モモコ はあ? あそこまで言われて今までどーりになるわけないでしょ。
魔法使い けどお互い様なんだし......まあね、確かにアイカちゃんって堅いし、一緒にいたら、ちょっと肩こっちゃうよね。
モモコ ホントだよ!! 流行なんてぜーんぜんだしさ。音楽も聞かない。ドラマは見ない。ファッションも分からない。だもん。何が楽しくて生きてるの?って感じでしょ。
魔法使い じゃあ、一緒にいるのも大変だ。
モモコ でしょ。だからよかったんじゃない? 何か魔女さんは何しに来たのって感じだけどさ。その点では感謝してもいいや。あんな何かって言うと知識ひけらかすやつ二度と喋りたくない。毎朝その日のニュースと、経済がどうとか内容はなんたらかんたらとかさ。
魔法使い ......その度に劣等感感じてきたの?
モモコ ......なにそれ。
魔法使い アイカちゃんが、難しいこと言う度に、理解できなくて惨めだったの?
モモコ なに言ってんの? 私はあんな勉強しかできないやつに劣等感なんて感じたことない!!だいたい、テストの点がなんだって言うの? そんなもんで、人間の価値って決まる訳じゃないでしょ!!
魔法使い 決まらないよ、テストの点ではね。
モモコ でしょ!? アイカも世の中も間違ってるよ。勉強できて、いい大学入って、いい会社入って、そういうのがえらいって考え方大嫌い。教科書に書いてある事なんて何の役にも立たないし、私のこと助けてくれないでしょ。いつ役に立つか分からないものを頭に入れたってしょうがないじゃん。あたしは今を生きてるんだから。
魔法使い それでいいと思うよ。10年後、地球がなくなってるならね。
モモコ え?
魔法使い でも、地球は滅びないし、10年後の未来もあるの。......ねえ、これから先もずーっと『今さえよければ......』って思いながら生きくわけ?その考え方って、すっごい危ないって分かってる? あっバカだから分からないか。
モモコ だからなんなのよ!そんなに勉強できないのが悪いことなの?
魔法使い 勉強できないからバカだって言ってるわけじゃないよ。自分で自分の可能性を全部、しかもつまんない考え方で潰しちゃって、その事に気づいてないからバカだって言ってるの。これじゃアイカちゃん、あなたと別れて正解だな。あの子は人生成功するよ。勉強できるおかげでたくさん選択肢があるもの。どれでも選り取りみどりってやつね。その中から、本当に自分のやりたいこと見つけて人生上々だ。
モモコ ......私は?
魔法使い ......。
モモコ そんな~。だって今更どうしろって言うの?
魔法使い 他の友達を頼ってみたら?
モモコ 自慢じゃないけど私の友達なんて、アイカ以外皆バカだよ。
魔法使い じゃあ、来年皆仲良くそろって2年生。
モモコ ヤダよ! ねぇ私どうしたらいいの?そりゃあ夢なんてまだ分からないけどさ。やっぱ人生成功したいよ~。
魔法使い でも、ほら、学校だけが全てじゃないし。何が何でも卒業しなきゃって事もないんじゃない?
モモコ うそ! さっきと言ってること違うじゃん。ねぇ魔女さん助けてよ。
魔法使い 名前で呼んだら何とかしてあげてもいいけど。
モモコ あんな長くて難しいの、一回で覚えられるのアイカくらいだよ。......そっか、今までアイカの出したヤマって外れたことなかったし、私が覚えられなかっただけで、ちゃんとやれば何とかなるかもしれないんだ......。でも、今更友達なんて思えないし。アイカだってスッゴイ怒ってたし............
魔法使い アイカちゃんは平気よ。彼女は頭のいいバカだから。何かテキトーに誉めておけば、今まで通りになるんじゃない?
モモコ そっか、そうだよね、なんせアイカだもんね。後は、私がどれだけ我慢できるか......か。
魔法使い できる?
モモコ ............うん! 何たって明るい未来が待ってるんだから! アイカ1人ぐらい手玉に取ってみせるって。私、世渡り上手だしね。

    魔女がうっすらと微笑む。
    あたりが暗くなる。

8 夕暮れの道端。

    明るくなると、そこは帰り道。
    アイカが歩いてくる。
    魔女が後ろから現れる。

魔法使い アイカちゃん、待って。
アイカ なに?......もとはと言えば、あなたさえ現れなければ、私達はいつも通り友達でいられたのよ。良い魔女だなんて言って近づいて、結局友情を壊しに来ただけじゃない。まぁ、元々存在しなかったんだから壊れたっていうのは適当じゃないわね。
魔法使い ごめんね。
アイカ べつにいいわ。あなたのおかげでモモコの本音知ることが出来たんだし。まあこっちの本音まで知られちゃったけど。......どうせモモコとは高校卒業するまでの友達のつもりだったから。
魔法使い そんなの寂しいよ。
アイカ 何言ってるの?『人は1人では生きていけない』なんて安っぽい台詞言わないでね。
魔法使い うっ......。そりゃ、確かにアイカちゃんとモモコちゃんじゃ、ちょーっとバランス悪い友情だったかもしれないけどさ。
アイカ あの子ったら、歴代の内閣総理大臣すら言えないのよ。
魔法使い うわ~ってことは今の文部大臣も、官房長官も判らないんだ。
アイカ そうよ。やんなっちゃう。
魔法使い 本当に馬鹿なんだねぇ。まぁ、そんなのちょっと調べれば分かるから、知っていたって対して何の自慢にもなんないけど。
アイカ あなたの言いたいこと想像つくわよ。『アイカちゃんは勉強しかないんだから勉強できて当然』とか。
魔法使い えっ何で分かったの?
アイカ 私は自分のこと理解できないようなバカとは違うの。でもね、勉強しかできないんだからと思うでしょうけど、勉強ができさえすれば、運動が苦手だろうとも、それを十分にカバーできる。国公立の大学に入れば、私立に比べて、家計を助けることも出来る。秀でるものがある分だけ、人は、他の人よりも優位に立つことが出来るのよ。
魔法使い 優位に立ってどうするの?
アイカ 優位に立てれば、物事が全てスムーズに動くじゃない。相手は私の格下として、それなりの動きをし、私はその力を使って成功していくのよ。
魔法使い 性格悪いね。
アイカ ずいぶんはっきり言うわね。
魔法使い でも、それならモモコちゃんと友達だった方が良かったんじゃない?
アイカ なんで?
魔法使い だって、モモコちゃんと友達じゃなくなったってことは、あなたは学校を卒業するまでの間、ずっと教室の隅で一人、黙って座ってるだけになるんだよ。
アイカ それが何だって言うのよ。
魔法使い 優越感を満足させることもできない。
アイカ たった二年でしょ。
魔法使い どうかな~だってアイカちゃん、今まで十七年間生きてきて、モモコちゃんが初めての友達でしょ。
アイカ 何でそんなことあんたに分かるのよ。
魔法使い だって、アイカちゃんみたいな根暗少女にわざわざ自分から近寄っていって、その上友達になって利用される人間。なんて、そうそういるはずないもの。そんなの、モモコちゃんぐらいじゃないの?
アイカ ......。
魔法使い そして、アイカちゃんが、他人に対する優越感を初めて知ったのもその時。だって、教室の隅にじっと毎日勉強のためだけにいるんだもん。そんな存在に、気づくはずもなかったよねぇ。
アイカ だから何だって言うのよ。
魔法使い 自分よりも劣っている者を見下ろす時の気分。その心地よさに、あなたはもう気づいているはずよ。
アイカ 何言ってるのよ。
魔法使い 隠したって無駄。モモコちゃんと話しているときのアイカちゃんを見ればすぐに分かる。......アイカちゃん、あなた、本当に楽しそうに笑ってるじゃない。
アイカ ......。
魔法使い 忘れることが出来るの? 勉強しかできないアイカちゃんが、初めて知った快感を。卒業するまでの2年間、ううん、もしかしたら、あなたに近寄ってくるようなバカなんて、もう二度と現れないかも知れない。
アイカ 二度と......。
魔法使い どうせ、モモコちゃんはアイカちゃんを必要としているんだよ。後はあなた次第でしょ。......それとも、モモコちゃんを手玉に取るなんて、自信ないの?
アイカ 馬鹿なこと言わないで。あんなバカ、適当に何か一言二言くっつけてすまなそうな顔すれば、すぐに操れるわよ。
魔法使い 何か、私より魔法使い。

    あたりは暗くなる。

9 教室で願う永遠の友情

    教室に、アイカとモモコが向き合って立っている。
    その二人を見守るように魔女がいる。

アイカ ......モモコごめん。
モモコ ......あたしこそ。
アイカ 私、モモコのこと本当に大切な友達だって思ってる。だけど、私モモコみたいに明るくないから。モモコのこと羨ましかった。
モモコ ......私も同じだよ。アイカのこと好きだけど、私がすっごい苦労しても出来ないようなこと、簡単にやっちゃえるアイカが羨ましくて......つい......だから、本当にゴメン
アイカ ......何か、私達って......全然似てないと思ってたけど。結構似てたのね。
モモコ うん。私ね、アイカが本当のこと言ってくれて嬉しかった。そりゃ最初はムカッってしたけど。これで本当に本当の友達って気がするんだ。
アイカ ......良かった。私もそう思ってたの。
モモコ 本当に!?
アイカ もちろん(と、本音の声として)そんなわけないでしょ。
モモコ えっ?......何か言った?
アイカ ううん何にも。ねえ、モモコこそ、本当にまた元通りになってくれるの?
モモコ 当たり前でしょ!(と、本音の声として)利用させてもらうんだから。
アイカ え?
モモコ アイカがいてくれなきゃ私やっぱり駄目だから。だからさ、こんな出来の悪い私だけど......これからもよろしく。
アイカ こちらこそ。............モモコから学ぶことたくさんあるみたい。
モモコ なに? そんなものあるの?
アイカ ええ......たとえば......バカに付ける薬はない、とか。
モモコ ......。
アイカ うそよ。
モモコ わかってるって。
アイカ それじゃ、決まりね願い事。
モモコ うん!

    2人は、互いに反対を向いてガッツポーズをとる。

モモコ 魔法使いさ~ん。
アイカ ユーラシア・UN・ユーゴスラビアユートピア・ユータナジー・ユザワヤさんよ。
魔法使い 2人とも願い事決まったみたいね
アイカ はい......いろいろありがとうございました。
魔法使い 気にしないでよ。
モモコ 私達がこうやって本当の友達になれたのも、全部ユザワヤさんのおかげです。
魔法使い 私はほんのちょっと手を貸しただけ。それに、私もこれで一人前の魔女になれるんだから。
アイカ あなた、魔女に向いてると思うわ。
魔法使い ありがとう。じゃあ、そろそろいいわね、2人の願い事言って。
二人 ......私達の友情が、永遠に続きますように。
魔法使い (と、適当な呪文を唱えて)これで二人は、もう永遠に友達よ。......ずっと離れることのできない、生涯唯一絶対的な親友。
モモコ ありがとう。
アイカ ......モモコ。帰ろうか。
モモコ うん、そうだね。
魔法使い じゃあねモモコちゃん、アイカちゃん。......大事なコト、もう忘れちゃダメだよ。自分にとって、相手がどんなに大切なのかってこと。

    アイカとモモコはうなづく。

モモコ それじゃあ。
魔法使い うん、ばいばい、仲良くね。
アイカ ええ、さよなら。

    二人は並んで去っていく。

魔法使い さようなら。いい友情を、ね。

    魔女は見送る。そのままあたりは暗くなる。

10 試験結果

    魔女の試験場。
    魔女が浮かび上がる。

魔法使い ただいま帰りました。

    ゆっくりと試験官が現れる。

試験官 あなたの帰還をもって、最終試験を終了とします。よろしいですね?
魔法使い もちろんです。......で、結果の方なんですけど。って、そんなに早く出るはず無いですよね。じゃ、失礼しま......
試験官 待ちなさい七十七番。結果はもうすでに出ています。
魔法使い ええっ!じゃあ私、明日っから、魔女ですか?
試験官 残念ですが。
魔法使い ですよね、まさかいきなりって事無いですよね。やっぱりそれなりの手続きとかあるんですよね。
試験官 ですから。
魔法使い ああ、それにしてもやっと念願の魔女かぁ。
試験官 七十七番。話を聞きなさい。違います。
魔法使い え?何がですか?
試験官 残念ですが。あなたにはもう10年間、見習いとして頑張ってもらいます。
魔法使い な、何でですか? 私ちゃんと人間を不幸にしてきました。しかも、二人も!あんな風に、お互いに依存し合い、騙し合うことを友情として続けるような人間は、必ず不幸になります。しかも、それが不幸なことだとは、おそらく気づかないまま一生を終えるんです。自分で自分を殺したも同然なんです!!
試験官 確かにあの2人はあなたの言うとおり不幸な人生を送るでしょう。ですが......試験の規定を忘れていませんか?
魔法使い 試験の、規定?
試験官 そう。「魔法を使ってはならない」としていたはずですが。
魔法使い そんな、魔法なんて使ってません! 二人の願いは、二人自身がそれぞれ叶え続けるんです。お互いに、相手が離れることは、プライドが許さないでしょう。あの二人に魔法なんて必要なかったんです。私の「魔女」としての存在のみを使って、あの二人を不幸にしたんです!
試験官 じゃあ、財布の中身は、どうやって当てたんですか?
魔法使い ......女の第6感。
試験官 あの少女達にどうやってあなたを魔女だと信じさせたのですか?
魔法使い ......人徳。
試験官 もう10年、頑張って下さい。
魔法使い で、でも、納得行きません。願い事を叶えるさいに魔法を使わなければいいんじゃないんですか?
試験官 試験が始まってからです。
魔法使い そんなぁ......

    魔女はとぼとぼと、退室しようとする。
    が、自分の持っているほうきに気づいて足を止める。

魔法使い ちょっと待ってくださいよ。
試験官 なんです?
魔法使い 私、二人の所までほうきで行ったんですよ。ほうきで。だって、この試験会場ってほうきでしか行き来できないじゃないですか。でも試験始まってから魔法使えないなら、その時点で失格じゃないですか。ほうきに乗ってしか来られない試験場から、どうやって、ほうき以外であの二人の所まで行けるんです? 方法があるんなら、教えて下さい。
試験官 そ、それは。
魔法使い 方法ありませんよね?無いって事は、やっぱり願いを叶える時まで魔法を使っていいって事になりますよね?
試験官 ......
魔法使い と言うことは、私は合格。
試験官 ......わかりました。
魔法使い やったぁ。
試験官 再試験を行ないましょう。
魔法使い え?
試験管 あなたの言うことも確かにもっともです。ので、改めて試験をする事にしましょう。今度はほうきだけは魔法を使ってよいという条件で。
魔法使い そんなぁ、い、いつやるんですか?
試験管 早いほうが良いでしょう。今すぐです。
魔法使い お風呂だって入ってないのに......
試験管 もう10年頑張りますか?
魔法使い それだけはやだ。
試験管 それでは次のターゲットを決めなさい。すぐに試験をはじめましょう。
魔法使い はい......なんかすっごい損した気分。
試験管 いやなら止めてもいいんですよ。
魔法使い い、いえ、やります。大丈夫です。人間なんて、ちょっとしたことで簡単に不幸になるんだから。本当、簡単ですから。
試験官 ......ではこれより、魔界厚生労働省・職業安定局・悪魔派遣・労働部・男性課、通称、「魔法使い」の再試験を行います。だれを、魔へと陥れるか決めなさい。
魔法使い はい!
魔法使い さて、だ、れ、を、ふ、こ、う、に、し、よ、う、か、な、と。うん。次は・・・あの人で。